其の九 ドミナントいじり倒しTips
トニック、サブドミナント、サブドミナント・マイナー、ドミナントと
これまでにいくつか機能とコードを紹介してきましたが、この中でドミナントほどいじり甲斐のあるコードはありません。
トニックへ(あるいはセカンダリ・ドミナントとして4度上に)強く進行するという目的を果たす、
ただそれだけなのですが、これをいかに飾るか、かっこよく聴かせるか、いかにアイデアを盛り込むかで
楽曲の映えがまるで変わるところが興味深いです。
実際ドミナント・コードは取りうるテンション・ノートも豊富ですし、
代理させるコードの選択幅もとても広いです。加えて特殊なアベイラブル・ノート・スケールを
用いることで、サウンド、メロディともに小洒落た、あるいは独特な雰囲気を醸し出すことができます。
ノーブルなサウンドへのアプローチとして決して欠かすことのできない要素であるといえましょう。
以下の内容はドミナントをいじり倒す方法を書き出したものです。純粋にドミナントに限らず、
セカンダリ・ドミナントとしても用いることができますので、とても重宝しますし、
あなたのサウンドをより引き立てる格好の調味料となること請け合いです。
<お約束のパターン>
まずは基本中の基本からです。
・V→I
通称ドミナント・モーション。まったく何のひねりもなく普通に用いられているやつですね。
いまさら説明する必要はないと思いますが、「おろ?」と思われる方は
こちらを参照してください。
・II→V→I
通称ダブル・ドミナント。ドイツ語優先の方は「ドッペル・ドミナント」の方が馴染むかもしれませんね。
4度の強進行を2回連続で使うことからこの名前がつけられています。これも説明の必要なしですね。
・V7をVIIm7(-5)に代理
ドミナントという機能で一致しますので、V7とVIIm7(-5)は相互に置き換えることができます。
これを「
代理」といいます。V7の雰囲気をあまり崩したくないときは
7度の音を省いてVIIm(-5)の形で用いるのがよいかと思います。この形は
V7の3度、5度、7度だけを使ったコードでもあります。
・リレーテッドIIm7
セカンダリ・ドミナントへのアプローチとしてある進行です。
たとえばIII7→VIm7という形のセカンダリ・ドミナントがあったとき、
そのIII7へのアプローチとしてVIIm7を直前に加えて、VIIm7→III7→VIm7という
擬似的なII→V→Iの形を作るものです。いわばセカンダリ・ダブル・ドミナントといったところでしょうか。
リレーテッドIIm7で使うアベイラブル・ノート・スケールはDorianになります。
<モーダル・インターチェンジを援用した代理>
其の六で紹介したモーダル・インターチェンジを援用することで、
ドミナントコードを劇的に変化させることができます。
この場合、Vm7となるナチュラル・マイナーへの変化を除いて、
ハーモニック・マイナーもメロディック・マイナーもV7の形になりますので、
主にテンション・ノートをうまく乗せることで変化を出していくことになります。
<参照:テンション/アベイラブル・ノート・スケール>
・ナチュラル・マイナーのVm7
メインとなるアベイラブル・ノート・スケールはVPhrygian。普通にコード進行だけを聴くと
転調しているように聞こえるかもしれませんので、そこはうまくメロディラインで調整するのが吉。
あるいはいっそ転調してしまうのも面白いかもしれません。
・ハーモニックマイナーのV7(♭9♭13)
メインとなるアベイラブル・ノート・スケールはHarmonic minor Perfect 5th below。
オルタード・テンションの登場です。このあたりから一気にジャズ、フュージョンよりのサウンドに
なってきますね。テンション・ノートがカギとなります。
・メロディック・マイナーのV7(9♭13)
メインとなるアベイラブル・ノート・スケールはMixolydian ♭13。
テンション・ノートがナチュラル9であるところがポイント。
これらコードのアベイラブル・ノート・スケールを敢えて「メインとなるアベイラブル・ノート・スケールは」
と紹介したのはモーダル・インターチェンジの発想から鑑みて
Vにあたるスケールなら基本的にどのスケールを採ってもかまわないからです。
ただそのコードの雰囲気を一番よく表しているスケールを「メイン」と呼んでいるに過ぎません。
<ちょっちワザありな代理>
以下は「普通に考えたら導きづらいけど、ドミナントの代理として使える」ワザです。
複雑にしてノーブルなサウンドを目指すにはうってつけです。
ただし、それなりに注意を払って使わなければ和音はどんどん濁ってきますので諸刃の剣とも言えましょう。
・裏コードへの代理
これはわりかし有名な話ですが、ドミナント・コードの最大の特徴であるトライトーンを
利用して代理コードを導くというものです。たとえばG7が含むトライトーンは
BとFですね。このBとFを含んだコードが世界にもうひとつあります。それが
D♭7(D♭・F・A♭・B)です。G7とD♭7はトライトーンが同じだから、じゃぁ
置き換えちゃってもいいよネ!というのがそもそもの発想です。
面白いことにこのGとD♭自体もトライトーンの関係にあります。
5度圏表を見ると
GとD♭は互いに正反対の位置にいることから通称「裏コード」と呼ばれています。
この裏コードを使うと、II→♭II→Iという具合にダブル・ドミナントを半音ずつ下行する進行に
変えることができます。とても使い勝手が良いので、セカンダリ・ドミナント的に使ったりして、
純粋にドミナントだけでなくとも役に立ちます。
ここで用いられるアベイラブル・ノート・スケールはLydian ♭7になります。
・ディミニッシュ・コードへの代理
其の七でも最後に少し触れましたが、ディミニッシュコードを使ってV゜を代理コードとして
用いることもできます。Iへのトライトーンを含まないのですが、ルートのVにテンション♯9、♯11、13を
乗せた特殊なドミナント・コードとして捕らえられていると思われます(その辺はよく知りません)。
ここで用いられるアベイラブル・ノート・スケールは
Combination of Diminishという特殊なスケールで、
I ♭II ♯II III ♯IV V VI ♭VII
という8音構成のスケールです(通称コンディミ)。このスケールはあるディミニッシュ・コードの構成音と、
その半音上のディミニッシュ・コードの構成音を組み合わせたものだったりします。
・オルタード・スケールを使う
オルタード・スケール(Altered scale)はメロディック・マイナーのVIIのスケール、
Altered Dominant(Super Locrian)のことですね。何でこのスケールがここで用いることができるかは
諸説紛紛で、曰くドミナントつながりでメロディック・マイナーのVIIからスケールだけ
Vに転用しているだとか、曰く裏コードから音を借りてきてV7にはめ込んだスケールだから、とか
いろいろ言われていますが、その実よく知りません。ただ言えるのはかっこよくて便利ということ
だけです。なんかそれで十分のような気がします(それを放棄という)。
ポイントはテンション・ノートに♯9を用いることができることと、基本的に
和音から5度の音が省かれることです。
♭9と♯9の二つを同時にテンションとして組み込むことは
できません。やったらえらいことになります。
和音構成は非常に濁りやすくなっていますので、暁は使用に際して
ルートも省いて3度、7度、♭9/♯9、♭13度の4音(またはテンションを減らして3音とか)で
使ったりすることが多いです。
このオルタード・スケールをアベイラブル・ノート・スケールとして用いれば
とてもジャズチックな渋いメロディを組むことができます。そういう意味では大好きです。あと名前がかっこいいし。
<ぶっちゃけた話>
いっぱい書いてありますが、発想を組み合わせていけばドミナントのパターンは
もっとたくさん考えられます。各ドミナント・コードや代理コードは取りうる音の微妙な違いで
分けられているものがほとんどですから、あまり目くじらを立ててコードを選ぶよりは
好きにコードを組んでからアベイラブル・ノート・スケールを参照する、という方が賢明だと思います。
ぶっちゃけた話、ドミナント・コードは
極論すればIへ進みうるトライトーンさえ入っていれば
この際あとの音は何だっていい(アボイドは別として)感じです。要はそれがかっこよく響くか、使えるか、というレベルの話です。
あまり肩肘を張らずに、ドミナントとは仲良く付き合っていきたいものですね。
参考にこんなものを作ってみました。
上記のすべては使っていませんが、
ドミナント部の進行の研究にはなるかもしれません。聴いてみてください。